これは、いわゆる「発明の抽出」と呼ばれる作業です。

発明は無体物であるため、認識しにくいものでもあります。

このため、物がそこにあっても、認識していなければ、存在しないのと同じことになって利用することができないのと同様に、こうした発明も認識しないと、たった一度の機会に利用するだけで終わってしまうばかりか、ひどいときには、別な機会に、同じ問題を解決するために、また時間と費用を使ってしまうこともあります。

したがって、発明は、まず切り出して認識し、限られた人間の頭の中だけに存在する状態、すなわち暗黙知のような状態ではなく、共有できるように、形式知（明示知）にすることが重要です。

このように形式知にする過程では、発明を文章で表すことが必要になりますが、文章で表現するためには、整理して考える必要があるため、発明を整理して客観的に把握できるようになる利点もあります。

発明は無体物であるため、その内容を把握しているつもりでも、実は把握できていないことがあるので、このように客観的に発明を把握することはとても大事です。

実際に、弁理士が発明者から発明の内容を聞くと、本来はもっと広い範囲の発明であるのに狭い範囲で発明を把握していることがあります。

こうしたことは、実際に製品開発などに関わっていると、開発した製品との関係で発明を把握してしまうために起こります。

したがって、発明の本質を客観的に把握することは生み出した発明を最大限に活用するためにとても重要であると言えます。

発明を客観的に把握するに当たっては、どの部分が発明であり、発明に必要な構成は何で、それによりどのような効果が得られるかを考えてみましょう。

特に、特許出願するかしないかにかかわらず、特許出願の明細書の記載にならって、従来の技術、問題点、これを解決する方法・手段、作用・効果を記載することがお奨めです。

これは、特許出願の明細書の記載形式が、発明を説明するのに適した形になっているからです。

従来の技術と対比して、発明の構成を特定し、どのような作用で発明の効果が得られるかを整理する過程を通して、効果を得るために本当に必要な構成を整理できるだけでなく、自社の技術の強みとなり得る発明の本質部分がどこにあるかを把握することができます。

また、このような形でまとめておけば、問題点から逆引きで解決方法・手段を探したり自社の他の製品に適用したりすることも可能になるだけでなく、保有技術を分野ごとにまとめて、他社の保有技術と比較することで、自社の技術的な強み、弱みの把握し、開発戦略の立案に利用することも可能になります。

こうした点から、特許出願するしないにかかわらず、特許出願と同じ準備をするとよいでしょう。

シグマ国際特許事務所（東京都・日本橋）の知財経営コンサルタント・弁理士　丹羽匡孝（たんばまさたか）は、こうした「発明の抽出」を得意としております。顧問契約などを通して、発明の抽出についてもご利用ください。

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